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東京地方裁判所 平成7年(特わ)3162号 判決 1996年3月26日

本店所在地

東京都渋谷区道玄坂二丁目一八番一一号

株式会社蒼友

(右代表者代表取締役 佐藤征)

本籍

東京都日野市百草一〇〇六番地の二六

住居

東京都世田谷区代沢四丁目一三番一一号

会社役員

佐藤征

昭和一八年一二月二三日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官沖原史康、弁護人土屋東一各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社蒼友を罰金一四〇〇万円に、

被告人佐藤征を懲役八月に処する。

被告人佐藤征に対し、この裁判確定の日から二年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社蒼友(以下「被告会社」という)は、東京都渋谷区道玄坂二丁目一八番一一号に本店を置き、室内内装工事等を目的とする資本金一〇〇〇万円の株式会社であり、被告人佐藤征(以下「被告人」という)は、被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、受取手数料を除外し、架空外注加工費を計上するなどの方法により所得を秘匿した上

第一  平成三年五月一日から平成四年四月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が五四一七万五三三七円(別紙1の修正損益計算書及び修正製造原価報告書参照)であったにもかかわらず、平成四年六月二六日、東京都渋谷区宇田川町一番一〇号所在の所轄渋谷税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二四七六万六九八八円で、これに対する法人税額が八〇七万一六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成八年押第一五二号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額一九一〇万円と右申告税額との差額一一〇二万八四〇〇円(別紙3のほ脱税額計算書参照)を免れ

第二  平成四年五月一日から平成五年四月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億六五六三万一四三九円(別紙2の修正損益計算書及び修正製造原価報告書参照)であったにもかかわらず、平成五年六月二九日、前記渋谷税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三一〇四万五六七八円で、これに対する法人税額が一〇二四万四四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額六〇七一万四一〇〇円と右申告税額との差額五〇四六万九七〇〇円(別紙3のほ脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書六通

一  大久保享子、嶋野亮一、野間康二(二通)、永田嶺及び橋本昭尾(二通)の大蔵事務官に対する各質問てん末書

大蔵事務官作成の工事収入調査書、外注加工費調査書、期首仕掛工事調査書、厚生費調査書、交際接待費調査書、受取利息調査書、受取手数料調査書、雑収入調査書、損金の額に算入した道府県民税利子割調査書、交際費限度超過額調査書、事業税認定損調査書及び領置てん末書

一  検察事務官作成の税務署所在地に関する捜査報告書

一  登記官作成の登記簿及び閉鎖登記簿(三通)の各謄本

判示第一の事実について

一  大蔵事務官作成の期末仕掛工事調査書

一  押収してある法人税確定申告書一袋(平成八年押第一五二号の1)

判示第二の事実について

一  大蔵事務官作成の給料手当調査書、会議費調査書及び雑費調査書

一  検察事務官作成の厚生費、交際接待費及び交際費限度超過額に関する各捜査報告書

一  押収してある法人税確定申告書一袋(同押号の2)

(法令の適用)

※ 以下の「刑法」は、平成七年法律第九一号による改正前のものである。

被告人の判示各所為は、いずれも法人税法一五九条一項に該当するところ、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、刑法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役八月に処し、情状により刑法二五条一項を適用して、この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予することとし、さらに、被告人の判示各所為は被告会社の業務に関してなされたものであるから、被告会社については、法人税法一六四条一項により同法一五九条一項の罰金刑に処せられるべきところ、情状により同条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、刑法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で被告会社を罰金一四〇〇万円に処することとする。

(量刑の理由)

本件のほ脱法人税額は二期合計で六一四九万円余で、ほ脱率は通算約七七パーセントである。このような脱税額、ほ脱率のほか、被告会社がその九九パーセントの受注を仰いでいた取引先会社からその裏金作りへの協力を依頼されたことが、本件犯行の契機となっていること、被告人の反省状況、被告会社の納税状況(本税は完納済みで附帯税を分納中)等を考慮して、主文のとおり量刑した。

よって、主文のとおり判決する。

(求刑 被告会社・罰金一八〇〇万円、被告人・懲役一〇月)

(裁判官 安廣文夫)

別紙1

修正損益計算書

<省略>

修正製造原価報告書

<省略>

別紙2

修正損益計算書

<省略>

修正製造原価報告書

<省略>

別紙3

ほ脱税額計算書

<省略>

ほ脱税額計算書

<省略>

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